LD、ADHD、高機能自閉症等のある子ども達に対するサポートツール検索サイト

通常の学級で工夫してもらった取り組み

  全国LD親の会のサポートツール・データベース事業では、昨年度から「ユニバーサルデザイン」について取り組んでいます。
  昨年12月に発表された文部科学省の調査結果では、通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒が6.5%ということでしたが、実際、親の会の会員調査でも多くの子どもたちが、通級を利用しながら、通常の学級で学んでいます。
  私たち保護者は、子どもが1日の大半の時間を過ごす通常学級での活動が、本人にとって主体的に参加できる場であり、学習内容が身につくような学びの場であってほしいと願っています。「通常の学級でユニバーサルな取り組みなんかできるの?」という声もありますが、学校や担任の先生のちょっとした工夫で、「子どもがクラスの中で生き生きと過ごせた」「子どもが安心して学校に通えた」という例は、昔からあったのではないでしょうか?
  そんな中で、通常の学級の中で工夫してもらった取り組みで、 「クラスの(多くの)皆にも使いやすい・学びやすい」 具体例を全国LD親の会の各会に聞いてみました。17会の会員から、声が集まりました。


*親の会17会からの回答

取り組み内容をキーワードで検索できます。
(例:下の欄に「漢字」と入力して検索すると、「漢字」に関連する回答だけが表示されます)

Ⅰ.ユニバーサルデザインの考え方

1.クラス運営

  • クラス目標を「あたたかい学級づくり」として、言われて嫌な言葉を使わないことで、居心地のよい場所になった。
  • 息子は普段からクラスで一人になりがちだが、学生ボランティアさんが長休時も息子の様子を見にクラスに来てくれている。(クラスのみんなから慕われている学生さんなので)みんなも寄ってきて、息子も楽しいと言っている。
  • 「ふわっとことば」「ちくちくことば」をクラスで取組む。
  • おわりの会で、持ちかえる物の確認をする時間を設ける。
  • 「~してはいけない」のような行動を否定する言葉ではなく、「~をしましょう」のような理想の行動を示す言葉で伝える。「~してはいけない」だと、禁止する行動は分かっても、どんな行動をするべきか分からない。具体的にするべき行動を指示されることにより、ルールが守れるようになった。おこなって欲しい行動を具体的に伝えてもらえて、成すべき行動がスムーズにできるようになった。
  • 学級会で決を採る時は、顔を机に伏せて手を挙げるようにした。学級会で発言する時、先に出た意見を否定せず、自分の考えのみを言うことにした。他の子の反応を気にせず意思表示でき、また自分の発言を否定されることがないため、積極的に発言できるようになった。学級会でのトラブルが減った。
  • 学校の机内に蓄積されたプリントを持ち帰るよう、定期的に声掛けしてくれた。学級内でも学校で配布されたプリントを家に持ち帰らない子が多く、クラス全体の習慣とすることができた。
  • 子供達への確認事項があるとき、大きな声で「わかった?」と聞くのではなく大きな声で「何時に集合ですか?」「今から何をしますか?」等という聞き方をして、その時点でわかっていない子達が確認時に理解できるような聞き方にする。
  • 子どもたちへの物事の伝え方として、長い文章をだらだらと話すのではなく、端的に明確に短い文章で話してくれた。(小学校)

2.授業での取り組み

  • (小5~6の頃)コミュニケーション能力を高めることを目的に、授業の中でグループで話し合う時間(少人数、3人くらい)を意識的に設定してくれた。みんなの前で発言できない子も少人数設定により、話せるチャンスが生まれた。
  • 家庭科でミシンなどの作業があり、担任の先生1人で不安だったが、グループ制にしてくださり、不器用な息子も女の子達にサポートしてもらいながら作業できていた。
  • 「ふわっとことば」「ちくちくことば」をクラスで取組む。
  • 漢字テストの予告をクラス全員にしてくれている。漢字が苦手な息子本人の意欲につながり、0点をとらなくなった。
  • ケガで数日間学校を休んでいたクラスの子が、支援学級在籍の息子の取り出しの時間を活用して、一緒に個別の授業を受けていた。病み上がりで外での体育見学が無理な子も、息子と一緒に取り出しの時間に授業を受けていたこともあった。
  • 特別支援のSSTプリントをクラスで使用している。
  • 授業を短いユニットに分けたり、夏の暑い時には「ぱたぱたタイム」といってうちわであおぐ時間を作ったりして、めりはりをつけている。
  • 注目する時の合図を決める。団扇にイラストを描いたもの(話を聞く・静かにする)を先生が出したら前を見るというルールがクラスにある。
  • 5年の社会の時間に、担任が授業のポイントなどをプリントにして、そこに自分で調べたり、班で学習してまとめたりするだけでいいようにしてくれた。板書が苦手な娘のためだったが、社会は板書も多いので、他の子にも好評だと聞いた。
  • 図工の工作や絵を書く時は、説明と同時に見本を出してもらい視覚的にも理解できるようにしてもらった。
  • 板書に時間がかかりすべてを書ききれない事を伝えると、書き込み式のプリント(ノートの代用として)を用意してくれた。クラス全員がそれを使っていた。
  • 授業で、ポイント掲載のプリントを配布してくれた。チョークの色や黒板の書き方を工夫しても、書字障害のある子に板書できる範囲は限られていた。書き漏らす場合も多いので、苦手な板書に意識を集中するよりも、プリントの方が国語本来の力を学習できた。書字障害の子だけでなく、後ろの席で黒板が見えにくい子や欠席児童の補習に役立ったようだ。
  • 小グループ学習を導入してくれた。集中持続が弱い子や、単独で課題を仕上げられない子にとっては、グループ内の他児の力を借りながら、課題に取り組むことができた。クラスで、協調性や協同学習の力を育むことができた。
  • 絵画・図工・作文などの課題において、完成品のモデルを提示して、課題のイメージを与えてくれた。(モデルの模倣許可。指導者が、自ら作業に取り組み、手本を見せるなど)。課題のイメージが浮かばず、図工や作文等は苦手意識があり、最初から課題を拒絶する傾向があったが、課題のイメージを与えると、取りあえず課題に取り組む姿勢が生まれた。さらに作業手順の手本を提示したので、どこから課題に取り組み、どのように機材器具を使うかが分かり、作業しやすくなった。クラス全体でも、課題が取り組みやすくなり、課題未提出者が減少したと聞いた。
  • (小学校で)ノートがとれなくて白いままで終わる事が多かった時に先生が学級全体を対象にアンダーラインの引き方やタイトルの付け方等、具体的に指導してくれた。これ以降、それまでよりはノートがとれるようになった。多分、他の子どもたちにも役立ったと思う。
  • (中学校で)定期テストの紙の量が多い上に裏表印刷であり、全く問題用紙をさばけなかった事をスクールカウンセラーを通じて伝えた。ページナンバーを付けてもらってわかりやすくなった。また、大問題と小問題の区別がわかりにくかったため、字の大きさを変えてもらった事でわかりやすくなった。他の子供たちにとっても良かったらしい。
  • 板書の重要ポイントは、色を変えて書いてあった。
  • (小学校で)授業中席を離れて友達と意見交換の時間があった。ずっと座ったままの受け身の授業は、息子にとってつらかったようで良かった。
  • (中学校で)授業の初めに、その日の主な板書のプリントを先に配って、ノートは取らずに授業をしていた。先生と生徒両方が板書に費やす時間と労力を軽減できるので、先生は授業中も説明などに時間を取れるし、書きながら聞くということが苦手な子にとっては、しっかり聞いていてもノートが取れた。プリントができているので良かったのではないかと思った。板書は全くないわけではなく、一人一人がプリントに書き加える形で自分のプリントを完成させていた。
  • 計算ドリルのノートの写す位置がわからず、いつも困っていたが、次年度学年全員のノートに、あらかじめ計算ドリルと連動した下書きなどがあるノートを使用してくれた。
  • テストや宿題で、×が苦手な長男に、付箋を張り、やり直しだとわからせるようにしてもらった。そのうち、クラス全員に×ではなく付箋を貼るようになった。クラス全員のやる気につながったという声を聞いた。
  • 音読の時間の「座り読み」をクラスで実践していた。行の読み飛ばしや重複読みをしてしまう子供は定規を当てながら読むことができるし、立って読むと緊張して声が小さくなる子にも好評だった。また、座って読むときの姿勢がクラス全体で良くなった。
  • ドッチボールやバレーボールをソフトタイプのボールにしてくれた。あたってもあまり痛くないので、ボールが苦手な子も恐怖心が和らいだ。
  • 高校生の社会科の先生は黒板に書いた人名や地名の読みの難しいものにはルビをふってくれた。また、毎授業の時にその日の授業内容のプリントを配り、黒板の中で板書する最低必要な事は(   )を使い生徒が書くようにしていた。息子はノート代わりにした。
  • 図工で物を書くときに、人形の模型を使った。手が顔に付いているように描く子や、どういう体の動きかイメージがつかめない子に、わかりやすかった。
  • テスト問題を読み上げてくれた。読みが苦手な子や、漢字のわからない子の支援になった。
  • 小学校低学年時は、机にわが子用の予定表を貼り今日の予定の確認、高学年時は、黒板に今日の時間ごとの予定を黒板に書いてクラス皆で確認してくれた。(黒板に書くことでクラス皆の行動がいいと先生は、言っていた。)
  • 板書を大きめに書いてくれた。漢字なども見やすかった。
  • 板書の時、箇条書きの目印に、一番上にマークをつけ、1つ1つの内容がどこからどこまでかはっきりわかる様にしてくれている。
  • (小学校で)授業の初めに、その時間の流れが番号が振って示されていた。
  • 1時間の中の授業内容が黒板の端っこに書いてあった。
    例)教科書○ページ⇒××について⇒プリント⇒おわり
  • (中学校で)1時間の授業の中で、黒板1枚の板書になるようにして、板書を消さないで残してくれている。書くのが遅いので、書いている途中で消されてしまうとやる気もなくなるが、ずっと残っているので自分のペースで写すことができる。
  • (中学校で)テスト範囲や提出物を一覧表にして配布してくれ。教科ごとにバラバラにもらうと、なくしてしまうが、一覧表だとすべて載っていてわかりやすいし、失うことも少ない。

3.教室内仕様

  • 中学で、後ろの黒板に各教科の準備するものや宿題を表にして書いてもらっていた。
  • 提出物、はカゴにはっきり何を入れるのか書いてある(しゅくだい・れんらく帳など)。
  • 声のボリュームの表をはっている。
  • (小学校で)黒板の端に時間割や日直等が書いてあって授業の板書と混ざってわかりにくかったのを、黒板には板書のみ、その他のことは横の掲示版に分けて書くようにしてくれた。スッキリしてわかりやすく、板書しやすくなった。
  • (小学校で)次の持ち物を黒板の端っこに書いてもらうようにした。
  • 「表情イラストと表情が表す感情のことば」のポスターを作ってクラスに掲示してくれた。感情の理解も進んだが、作文を書く時にも役に立っていたようだ。
  • 大事な指示や連絡事項は消さないで残しておいて、いつでも見られるようにしてくれた。
  • 教室前面には掲示物は無かった。黒板の上や横に掲示物がたくさんあると、授業中に気になり集中できなかったが、気が散らなくなった。
  • 掃除のときに動かした後、どこに戻せばいいかわかるように、イスや机の置く床にテープで印をつけていた。
  • 理科室・家庭科室など、機材器具の整頓場所を引き出しや扉に文字だけでなくイラストでも表示されていた。イラスト表示することで、準備片付けが手早く行えるようになった。
  • クラス全員の机に黄色のビニルテープを貼り、そこに各自の予定を自分で書くようにしていた。(「委員会の当番金曜12時~」など)
  • 担任の先生が、1週間分の授業の時間割に、授業の内容と持ちものや行事などを記載した予定表をクラス全員に配ってくれた。
  • 黒板をきれいにして、余計な掲示物は貼らないようになった。
  • 小物が入っているロッカーにカーテンを付けて中が見えないようにしている。
  • 文房具を忘れると貸し出し専用文房具から借りることができる。
  • 小1の頃、「あと10分だよ」というような時に大きなタイムタイマーを使っていた。各教室にタイマーを配布していた。「あと○○分」という指示が視覚的によくわかった。
  • 時間割のマグネットを準備し、今日の時間割と明日の時間割を黒板の端に貼ってもらい、見通しを立てやすくするとともに、急な時間割変更などを受け入れやすくしてくれた。
  • 小さい黒板(新聞紙を広げたくらい)に連絡帳の内容を書いてもらった。時間がかかっても当番の子に黒板を消されずに済む。
  • 黒板では、青はあまり使わず(見えにくいので)、色を使う時は紙に書いて貼りだしてくれた。
  • 机より立つ時のイスの音をなくす工夫をしてくれた。全校のイスの足に古いテニスボールを切り、それをはめて、「ギ―」という音をたてないようにしてくれた。
  • 日直当番の時、全ての仕事をするのを忘れてしまうため、やり終えたら札を裏返して確認できるように、教室の黒板の横にボードを作ってもらった。
  • 翌日の連絡内容をもっと早い時間から黒板の端に書いてくれるようになって、休み時間の空き時間等利用して書けるようになった。
  • プリントの重要度で紙の色を変えてくれた。(青:親に渡す、ピンク:親の返事が要る など)
  • 予定変更は、板書やプリントで視覚的に知らせてくれた。(それまでは放送や伝言だった。)

4.校内仕様

  • 校舎の大規模改修のときに、段差や階段のあるところにスロープや洋式トイレを設置された。
  • 校内の教室配置図を現在位置と共にワンフロアごとに掲示してくれた。空間認知が苦手なので、移動教室の時に役立った。新入生や転入生、授業参観の保護者、来客者にとっても便利だったと思う。
  • 学校内の検診は壁に順番を掲示している。
  • 小学校の入学式で、式次第を大きなスクリーンを利用して、パワーポイントによる視覚支援している。

Ⅱ.合理的配慮

  • 合奏、演劇など集団で課題に取り組まなければならない場合は、児童生徒に合った役割を与え、過度に負担を与えないようにしてくれた。(司会挨拶や単純演奏の打楽器等を担当させる、劇のセリフや演技は脚本演出を変えるなど)。課題のハードルを下げたことにより、集団作業を拒否しがちな子どもが、共に課題に参加できるようになった。邪魔者扱いされなくなり、仲間意識を生まれた。
  • 組体操で、他児と同じ演目が困難の場合は、別の課題や補助などの役割を与えてくれた。隣に立って手を添えるだけの簡単な補助役や、手を広げるだけの完成ポーズで参加した。苦手だから参加しなくて構わないではなく、苦手なもの以外で課題に参加し、周囲との協調を学ぶことができた。同級生からは、皆と同じにできなくても、何か別の形で協力することで、努力を認めてもらえた。クラス内では、誰かが配慮の必要な子をサポートする姿勢が自然発生し、弱いものいじめや邪魔者排除の芽を摘むことができたと思う。
  • 必要に応じて、ノート・鉛筆・コンパス・分度器などの文房具や裁縫用具・絵の具・リコーダーなどの教材を使いやすい代用物への変更を認めてくれた(ノートや原稿用紙のサイズ変更、糸通しグッズの利用、製図用コンパスの利用など)。目と手の協応運動に困難があるため、教材を使いこなせず、課題に参加できなかった子どもが、代用教材を使用することによって、課題に取り組むことができた。クラスの誰もが、代用教材の使用を許可されたことで、道具や教材を工夫する姿勢が生まれ、子ども自らがアイディアを出せるようになった。
  • 特性に応じた座席の位置やグループ分けをしてもらった。環境調整が弱いので、気になる刺激によって課題に集中できなくなるため、刺激となる人や物から遠ざけると、課題に取り組めるようになった。グループ学習では、友達に内容を教えることにより、自分も学習した内容を再確認でき、いっそう理解を深めることができた。子供同士に共存の力が芽生えた。
  • 定期考査の別室、時間延長(1,3倍)を実施してもらい、通常級の学校でもipadの使用許可がでた。
  • 中学の先生がタッチタイピングの練習のために週1でチャットのようにメールメッセージでやりとりをしてもらった。お陰でタイピングも早くなってきたのでどのように使うか、自分でプレゼンを考え、先生にみてもらい、まず通級での持ち込み、2月から通常級の理科のみipadを導入している。今月中には5教科持ち込む予定。持ち込みに際し、他のお子さんへ先生からの説明があったが、何人かのお子さん、ご家庭から、「自分もそうなのでは・・・」という相談があったそうです。周りの子供たちも理解してくれて、ノイズキャンセリングのヘッドホンを使っていても先生方が心配されていたような問題も起きていない
  • 縦行だけの連絡帳ではなく項目が既に印刷されている1日1ページの連絡帳の使用許可をもらった。項目別の枠に記入するだけなので時間短縮ができ、連絡帳記入にも慣れ、今では普通に記入できるようになった。
  • テストの時に、掛算九九の一覧表を息子に持たせ指でさしながらさせて欲しいと頼み、合格した。合格出来ない子の中の何人かは同じやり方で合格できたと担任から聞いた。
  • 小学校の時、みんなと同じ更衣室で更衣するのが苦手だったので、保健室や、廊下にあった倉庫などで更衣させてもらった。他の子でも苦手な子もおり、同じような対応がされていた。
  • 宿題の漢字書き取りはクラス全員分量が違って良いことになっていた。得意な子は難しい漢字でも、量を増やすのもOK。苦手な子は漢字の数を減らして、丁寧に書いていた。(最低5つはやる など)
  • 数学のテスト問題の拡大印刷をしてもらった。
  • 本人が書きやすいノートの使用を許可してもらった。

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